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食品接触材料におけるPVCの評価・選定ポイント|規制対応・可塑剤・移行評価を解説

食品接触材料(FCM)としてPVCを評価・選定する際は、①配合成分の管理、②食品への移行評価、③用途別の要求性能の3点が重要です。特に軟質PVCでは、可塑剤の種類やDEHPフリー化が、物性、加工性、移行特性、規制適合性に関係します。

本記事では、食品用ホース、チューブ、ガスケット、包装材を例に、食品接触用PVCの位置づけ、規制対応、成分管理、移行評価、用途別の確認ポイントを整理します。日本、EU、米国などの市場や、油脂食品、高温、長時間接触といった使用条件を踏まえた材料選定の考え方も解説します。

この記事の要点

・食品接触用途におけるPVCの評価では「成分管理」「移行評価」「用途別の要求性能」の3点が重要
・軟質PVCでは可塑剤のDEHPフリー化と移行評価が特に重要
・用途(ホース・チューブ・ガスケット・包装材)と接触する食品・使用条件ごとに確認ポイントが変わる

食品接触用途におけるPVCの位置づけ

PVCは食品接触材料に使える?用途別の位置づけ

PVC(ポリ塩化ビニル)は、食品包装材や食品用チューブ、ホース、ガスケットなどで使用されている材料の一つです。食品接触用途には包装材だけでなく、食品製造設備で使用される流体搬送部材やシール部材も含まれます。

一方で、食品接触用途では一般用途とは異なり、安全性や規制適合性を考慮した材料選定が求められます。そのため、単にPVCを使用しているかどうかではなく、どのような配合で、どのような製品に使用され、どのような条件で食品と接触するのかを確認する必要があります。

PVCは、配合成分、最終製品の使用条件、対象市場の規制を確認したうえで、食品接触用途の材料候補となります。ただし、一般用途向けのPVCをそのまま食品接触用途に使用できるという意味ではありません。

食品接触用途では配合全体を評価する

食品接触用途では、樹脂そのものだけでなく、材料を構成する成分全体が対象となります。
例えばPVCでは、PVC樹脂に加えて、可塑剤、安定剤、その他添加剤が配合される場合があります。同じPVCであっても、配合内容や用途によって確認すべき規制適合性、移行評価、物性評価などは異なります。

そのため食品接触用途を評価する際には、材料名だけで判断するのではなく、使用する原材料や添加剤の構成、最終製品の用途、食品との接触条件を踏まえて適合性を確認することが重要です。

食品・用途・使用条件で評価の考え方は変わる

食品接触用途では、接触する食品や使用条件によって確認すべきポイントが変わります。
例えば、水系食品と油脂食品では、材料との相互作用や成分の移行挙動が異なる場合があります。また、常温使用と高温使用では、必要な耐熱性や評価条件が変わります。

さらに、同じPVCであっても、ホース、チューブ、ガスケット、包装材では求められる性能が異なります。
そのため、食品接触用途におけるPVCの適用を検討する際は、材料だけでなく、接触する食品、用途、使用環境をあわせて考えることが重要です。

食品グレードPVCとは

一般に「食品グレードPVC」と呼ばれる材料は、食品接触用途を想定して、PVC樹脂、可塑剤、安定剤、滑剤、着色剤などの原材料を選定したPVC配合を指します。

ただし「食品グレード」という名称だけで、すべての食品、温度、接触時間、地域の規制に適合することを意味するものではありません。実際の採用にあたっては、対象市場の規制、食品の種類、使用温度、接触時間、洗浄条件、最終製品の移行評価を確認する必要があります。

食品接触用途で求められる性能

食品接触用途では、規制適合性や移行特性だけでなく、用途に応じた性能も求められます。
PVCは、柔軟性、透明性、加工性、コストなどのバランスを取りやすい材料です。特に、柔軟性を付与しやすいこと、透明性を確保しやすいこと、押出加工に適していることは、食品用ホースやチューブで検討される理由の一つです。

一方、用途によっては、シール性、圧縮永久ひずみ、耐薬品性、耐熱性、低温柔軟性などが重視されます。そのため、PVCを食品接触用途に採用する際には、規制と移行だけでなく、製品として必要な物性を確認する必要があります。

製品

主な要求特性

ホース

柔軟性、耐屈曲性、洗浄性、耐圧性

チューブ

柔軟性、透明性、耐折れ曲がり性、低臭気性

ガスケット

シール性、圧縮永久ひずみ、耐薬品性

食品包装材

保存安定性、加工性、内容物の視認性

食品接触材料の規制対応

成分管理

食品接触材料の規制では、使用できる成分を適切に管理することが重要な考え方の一つです。
食品と接触する材料には、樹脂だけでなく、可塑剤、安定剤、滑剤、着色剤などさまざまな物質が使用される場合があります。そのため、食品接触材料では、どのような材料が使われているかだけでなく、どのような成分が配合されているかも確認が必要です。

日本、EU、米国では制度の仕組みは異なりますが、いずれも食品接触材料に使われる成分の管理を重視しています。材料選定の際には、単に樹脂名を見るのではなく、配合成分まで含めて確認することが重要です。

関連: 各国の規制比較と詳細は、「食品接触用途におけるPVC(ポリ塩化ビニル)の動向と代替樹脂」で解説しています。

移行管理

食品接触材料では、使用される成分だけでなく、それらが食品へ移行する可能性についても考慮する必要があります。
食品と材料が接触すると、使用条件によっては材料中の成分が食品側へ移行することがあります。食品接触材料では、食品の品質や安全性に影響を与えないことが求められるため、食品への移行量や使用条件を考慮した評価が行われます。
特に油脂食品との接触や高温環境、長時間接触などの条件では、移行に関する評価の重要性が高くなります。

そのため、食品接触材料の評価では、「何が使われているか」という成分管理に加え、「どの程度移行する可能性があるか」という移行管理も重視されています。

軟質PVCで可塑剤が重要となる理由

軟質PVCと可塑剤の関係

PVCは、大きく硬質PVCと軟質PVCに分類されます。硬質PVCは比較的剛直で、配管材やシートなどに使用される一方、ホースやチューブのように柔軟性が求められる用途では軟質PVCが使用されます。
軟質PVCでは、一般的に可塑剤を20~50wt%程度配合することで、柔軟性や加工性を付与します。可塑剤はPVC鎖の間に入り、分子鎖間の相互作用を緩和することで、PVCのガラス転移温度(Tg)を低下させます。
その結果、PVCにやわらかさや曲げやすさを付与し、軟質PVCとして成形・使用できるようになります。

なぜ可塑剤が食品接触用途で注目されるのか

可塑剤が食品接触用途で注目される理由の一つは、軟質PVCはPVCと可塑剤の混合物であるためです。一般的な外部可塑剤はPVCと化学的に結合しているわけではなく、物理的に混ざっている状態です。そのため、分子量が小さい可塑剤ほど材料中を移動しやすく、食品側へ移行する可能性があります。特に油脂食品との接触や高温環境、長時間接触などの条件では、可塑剤の挙動を考慮した評価が重要になります。

食品接触用途では、この移行の可能性が可塑剤を検討する際の重要なポイントになります。

関連:PVC可塑剤の詳細な選定ポイントやDEHP・ATBC・TOTMの比較は、「食品接触用PVCで可塑剤はなぜ移行する?DEHP・ATBC・TOTMの特徴と移行メカニズムを解説」で詳しく解説しています。 

DEHPフリーPVCという考え方

食品接触用途における可塑剤の話題では、DEHPフリーPVCという考え方が取り上げられることがあります。 
DEHP(Di(2-ethylhexyl) phthalate)は代表的なフタル酸系可塑剤の一つですが、日本では2002年から食品衛生法で、油脂・脂肪性食品に接触する用途で使用が制限されています。 
また、EUのREACH規則ではDEHPがSVHCとして管理され、玩具や乳幼児用品などでは使用制限があります。こうした背景から、食品接触用途では移行リスクや規制適合性を考慮し、DEHPを用いない設計が検討されることがあります。 

ただし、DEHPを使用していないことだけで材料の適否が決まるわけではありません。実際には、使用する可塑剤の種類、使用環境、対象となる規制などを踏まえて評価する必要があります。 

食品接触用途で確認したい評価項目

食品接触用途では、接触する食品や用途、使用条件によって確認すべきポイントが変わります。材料選定や評価を行う際は、以下のような観点を整理しておくことが重要です。 

食品別の確認項目

食品分類 

主な評価項目・要求特性 

油脂食品 

移行評価、耐油性、膨潤・軟化の有無 

アルコールを含む食品 

耐アルコール性、移行評価、膨潤・物性変化の有無 

酸性食品 

耐酸性、長期接触時の安定性 

水系食品 

低臭気性、長期安定性 

使用条件別の確認項目

使用条件・工程 

主な評価項目・要求特性 

洗浄工程(CIP等を含む) 

耐薬品性、耐熱性、長期耐久性 

高温充填・加熱工程 

耐熱性、移行評価、物性変化 

繰り返し使用 

耐久性、耐屈曲性、疲労劣化 

長期保管 

長期安定性、外観変化、臭気変化 

低温環境 

柔軟性維持、耐衝撃性、硬化の有無 

そのため、食品接触用途におけるPVCの評価では、「PVCかどうか」だけでなく、接触する食品、用途、使用条件を整理した上で検討することが重要です。 

食品接触材料の選定フロー

食品接触材料では、単に規制に適合している材料を選ぶだけでは十分ではありません。実際には、接触する食品の種類、用途、使用条件、必要な性能などを総合的に整理した上で材料を選定することが重要です。 

選定の流れ

  1. 食品の種類を確認(油脂・アルコール・酸性・水系) 

  2. 用途・要求性能を整理(ホース・チューブ・ガスケット・包装材) 

  3. 使用条件を確認(温度・接触時間・洗浄工程 など) 

  4. 対象規制要件を確認(食品衛生法・規則(EU)No.10/2011・GB 4806、GB9685 等) 

  5. 配合成分と適合性資料を確認 

  6. 候補材料を比較(PVC・TPE・シリコーン 等) 

  7. 移行評価・物性評価 

  8. 最終材料を選定

材料候補の考え方

近年は、PVCに加えてTPEやシリコーンなどの材料が選択肢として検討されるケースもあります。しかし、特定の材料が常に優れているわけではなく、用途によって適した材料は異なります。 
そのため、材料選定では「PVCか、それ以外か」という考え方ではなく、要求性能、安全性、規制適合性、加工性、コストなどを総合的に評価することが重要です。 
例えば、PVC以外の柔軟材料が求められる場合や、用途に応じてTPEが有力な選択肢となるケースもあります。 

関連: PVCからの代替材料(TPEなど)への切り替えを検討されている方は、「食品接触用途におけるPVCの動向と代替樹脂」 「食品接触材料の最新規制動向とエラストマー」で解説しています。 

よくある質問(FAQ)

Q1:食品グレードPVCとは何ですか? 

食品接触用途を想定し、PVC樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤などを選定した配合です。ただし、すべての食品や使用条件に適合することを意味するものではなく、対象市場の規制と使用条件の確認が必要です。 

Q2:DEHPフリーPVCとは何ですか? 

DEHPフリーPVCとは、代表的なフタル酸系可塑剤であるDEHPを使用しない軟質PVC設計のことです。DEHPは特に油脂・脂肪性食品との接触で移行評価が重要となるため、こうした用途では代替可塑剤を用いた設計が検討されます。ただし、DEHPを使用していないことだけで材料の適否が決まるわけではありません。使用する可塑剤の種類、接触する食品、使用条件などを踏まえて総合的に評価する必要があります。 
関連: 可塑剤の種類ごとの特徴や移行メカニズムの詳細は、「PVC可塑剤の選定と移行メカニズム」 で解説しています。 

Q3:食品接触用途でPVCとTPE、シリコーンはどう使い分けますか? 

食品接触用途では「PVCかTPEかシリコーンか」を一律に決めるのではなく、要求性能(柔軟性、透明性、耐熱性)、安全性、規制適合性、コストを総合的に評価することが重要です。可塑剤を使用しない材料構成が求められる場合には、TPEやシリコーンなどが候補となります。一方、PVCの柔軟性、透明性、加工性などを活かしたい場合には、DEHPフリーPVCを含むPVC配合も検討対象となります。 

Q4:軟質PVCの可塑剤移行は、どのような条件で起こりやすいですか? 

可塑剤はPVC樹脂に化学的に結合していないため、油脂食品との接触、高温環境、長時間接触という3つの条件が重なると移行リスクが高まります。特に油脂・脂肪性食品への使用では、移行評価の重要性がより高くなります。 
関連: 可塑剤の種類ごとの特徴や移行メカニズムの詳細は、「PVC可塑剤の選定と移行メカニズム」 で解説しています。 

Q5:食品接触材料において、樹脂名だけで安全性は判断できますか? 

できません。食品接触材料では樹脂そのものだけでなく、可塑剤・安定剤・滑剤・着色剤などの配合成分全体が評価対象となります。同じPVCでも配合内容や用途条件によって規制適合性や移行評価の結果は異なります。 

Q6:食品包装材・ホース・チューブ・ガスケットで、確認すべきポイントは同じですか? 

異なります。ホースは柔軟性・耐屈曲性・洗浄性、チューブは透明性・耐折れ曲がり性・低臭気性、ガスケットはシール性・圧縮永久ひずみ・耐薬品性、食品包装材は保存安定性・加工性・視認性が重視され、用途ごとに評価軸が変わります。 

導入の際の注意点

・食品接触用途の規制対応には、市場ごとの基準理解と、社内サプライチェーンにおける正確な情報伝達が不可欠です。各国・各地域の食品接触材料規制は頻繁に改定されるため、導入時には必ず最新の公的情報・ガイドラインをご確認ください。

・三菱ケミカルはコンパウンドメーカーとして、各種原料メーカーへの調査を通じて製品の適合状況を確認し、最新の各国規制状況を踏まえた回答やグレード提案を行っています。ただし、規制や解釈は今後も変更される可能性があるため、具体的な規制確認やグレード選定については、その都度、営業担当まで個別にお問い合わせください。

・コンパウンド製品の性質上、配合構成や使用原料の確認には一定のお時間を要する場合があります。各国規制への対応状況の照会・回答にあたっては、事前に十分なリードタイムをいただけますよう、ご理解をお願いいたします。

三菱ケミカルでは、各種食品接触材料に関するサンプル提供・技術相談を承っております。

用途に応じて最適なグレードをご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。

参考URL

[1]食品接触に関する規制 

・消費者庁「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月以降)」 
https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/appliance/positive_list_new 

・U.S. Government Publishing Office, “Title 21 – Food and Drugs, Vol.3(Parts 170–199 を収載。174–178を含む)” 
https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2025-title21-vol3/pdf/CFR-2025-title21-vol3.pdf 

・European Commission, “Commission Regulation (EU) No 10/2011 on plastic materials and articles intended to come into contact with food” 
https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2011/10/2026-02-23 

[2]DEHP・可塑剤関連 

・厚生労働省「フタル酸エステル類を含有するポリ塩化ビニルを主成分とする合成樹脂製器具・容器包装に関する使用規制Q&A」 
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kigu/dl/3.pdf 

稲垣 舞
稲垣 舞
所属: Electronics & Packaging Marketing Department Global Planning Division Polymers Compound Business Group 経歴:ポリマー材料の研究開発に11年間従事し、主に食品包装・食品接触用途向けの材料開発を担当。ポリマー設計およびコンパウンド開発を通じて、軟包装からリジッド包装まで幅広い用途を経験。現在は食品分野向け材料のマーケティングを担当し、新規市場開拓や用途開発に取り組む。

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