
細胞培養用チューブ選定ガイド ― 再生医療の未来を支える材料選びのポイント
再生医療の研究・製造工程では、細胞や培養液が直接接触するチューブの品質が、製品の安全性と有効性を左右します。本記事では、再生医療の最新動向とチューブ材質の課題を整理したうえで、三菱ケミカルの細胞培養向けTPE材料「Zelas™ MP6301C」と、サンプラテック社のiP-TEC®チューブ製品をご紹介します。
再生医療を取り巻く課題
再生医療とは?
再生医療の普及に向けた課題
再生医療が今後本格的な成長期を迎えると期待される一方で、産業化にあたって様々な課題も浮上しています。
品質規制基準が未整備
再生医療に用いられる樹脂製品に関する品質基準を定めた当局の規制は、現時点では存在しません。再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)では「器材ユーザーFIRMガイド」を策定・公開し、プラスチック製器材選定時の留意事項(無菌性保証水準、エンドトキシン管理、抽出物・溶出物管理、細胞毒性試験など)について指針を示していますが、統一的な業界標準は発展途上の段階です。
研究用器材が医療用途を想定して設計されていない
再生医療では「細胞そのもの」が最終製品であるため、材料由来の溶出物(extractables & leachables)が細胞の健康・増殖・品質に直接影響を及ぼしますが、現在使用されている多くの樹脂製品は、元来研究用として製造されたものであり、再生医療等の医薬品製造用途を考慮した設計にはなっていません。医療材料として安定供給してくれる素材は限定的で、素材の入手自体が困難というケースもあります。
以下に再生医療研究で用いられるチューブの主な材質を比較します。

再生医療の製造現場では、閉鎖系の維持が極めて重要であり、チューブの無菌的な接続・切断操作が求められます。この点において、TPE系材料は熱溶接が可能であることが大きな利点となります。一方、シリコーンは熱溶接に対応できないため、プリアセンブルされた系統や専用の無菌コネクターが必要となります。
三菱ケミカルが提供する細胞培養向けチューブ材料(TPE)
上記の材質比較からもわかるように、TPEは「低溶出・熱溶接可能・多様な滅菌方法」という再生医療に求められる特性をバランスよく備えた材料です。三菱ケミカルでは、30年以上にわたる医療用コンパウンド「Zelas™」シリーズの開発実績をベースに、細胞培養用途に最適化するため、配合の細部までこだわりぬいたTPS系グレード「MP6301C」をラインアップしています。

Zelas™ MP6301Cは上図に示す通り、一般的な株化細胞と比べ化学物質への感受性が極めて高いとされているiPS細胞を使用した接着培養試験においても問題なく増殖できることを確認しています。一方、PVC(ポリ塩化ビニル)では初期播種数からほとんど増殖が見られていません。これは、PVCから可塑剤が溶出し、iPS細胞に対する細胞毒性として作用した可能性があると考察しており、本結果は、再生医療研究で使用するプラスチック器材の材質選定が細胞の生存・増殖に決定的な影響を及ぼすことを示しています。
MP6301Cのその他の特徴:
• γ線滅菌対応:再生医療製品の製造工程で広く採用されるγ線滅菌に対応し、25kGy照射後も物性変化が小さく溶出物の少ない性能を維持します。
• AC(オートクレーブ)滅菌対応:高圧蒸気滅菌(121℃)にも対応しており、多様な滅菌プロセスに柔軟に適合します。
• 熱溶着可能:熱溶着式の無菌チューブ接合機や超音波式のチューブシーラーとの互換性を持ち、無菌的な接続・切断操作により閉鎖系の維持を実現します。シリコーンチューブでは困難な熱溶接による完全閉鎖系の構築が可能です。また、ポリプロピレンや弊社製品であるZelas™ TPO、TPS、CPとも熱溶着やオーバーモールドが可能であり、再生医療において、様々な製品設計の構成自由度を高めます。
• 専用グレード設計可能:材料の流動性や硬度調整等、豊富な配合設計の知見に基づき、グレード設計が可能です。
サンプラテックが提供する細胞培養向けTPEチューブ
三菱ケミカルの「Zelas™ MP6301C」は材料(コンパウンド)としてのご提供となりますが、チューブ形状に成形された最終製品をお求めの場合は、株式会社サンプラテックのiP-TEC®シリーズをぜひご検討ください。
サンプラテック社は、再生医療の実現に向けた細胞のライブ輸送技術や培養デバイスを長年にわたり開発してきた実績を持ちます。再生医療等製品の容器開発や、閉鎖型自動培養装置の開発など、再生医療の最前線で培った知見を製品設計に反映しています。

iP-TEC®チューブ製品の強み:
• 国内製造品ならではの安定供給:海外メーカー依存のサプライチェーンリスクを回避し、安定した品質・納期での製品供給を実現します。
• 自動細胞培養装置向けチューブ:灌流培養システムに最適化されたチューブ設計で、閉鎖系での自動培地交換を可能にします。
• 柔軟なカスタム対応:お客様の装置仕様や培養プロセスに応じたサイズ・形状のカスタマイズや、性能試験・品質基準の設定にも対応します。
再生医療の産業化が加速する中、「材料の品質」と「チューブ製品としての完成度」の両輪が揃ってこそ、安全で信頼性の高い製造プロセスが実現します。材料メーカーとデバイスメーカーの連携による一貫したソリューションに、ぜひご期待ください。
▶ iP-TEC®の製品ラインアップ・お問い合わせはこちら:https://iptec.sanplatec.co.jp/
まとめ
再生医療の産業化に伴い、細胞培養用チューブの材質選定は「コストや利便性」だけでなく、製品品質と患者安全に直結する設計パラメータとなっています。溶出物による細胞毒性、滅菌対応性、ガス透過性、そして無菌接続の可否 ― これらの課題を総合的にクリアできる材料として、TPEは有力な選択肢です。
三菱ケミカルのZelas™ MP6301Cは、γ線・オートクレーブ滅菌対応、熱溶着による閉鎖系構築、そして確認済みの細胞増殖性により、再生医療の厳しい要求に応えるTPE材料です。そして、このMP6301Cを用いたチューブ製品として、サンプラテック社のiP-TEC®が、国内製造による安定供給と自動培養装置への最適化設計で、研究から製造までシームレスにサポートします。
細胞培養用チューブの材料選定・製品開発でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 日本経済新聞 電子版「iPS細胞2製品承認 初の実用化、夏にも市販」(2026年3月6日配信、最終アクセス日:2026年3月10日) https://www.nikkei.com/article/DGKKZO94831880W6A300C2EAF000/


