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医療機器向けエラストマー材料選定ガイド─新規柔軟TPU:ChronoFlex™ S

本記事では、既存の医療用TPUやシリコーンに課題を感じている方、材料選定の方向性を確認したい方を主な対象としています。医療機器向けエラストマー材料選定の基本軸(柔軟性・耐久性・長期留置・加工性・サステナビリティ)を整理し、従来材料であるシリコーンやカーボネート系TPUの課題を俯瞰します。そのうえで、柔軟かつ長期インプラント適合を両立し、さらに36%バイオベース含有率を持つ芳香族ポリカーボネート系TPU「ChronoFlex™ S」に着目し、心血管・神経血管カテーテルやバルーンでの具体的な使いどころをわかりやすく紹介します。

用途や仕様が確定していなくても、検討段階の早い時期でも、お気軽にご相談いただけます。

医療機器に適したエラストマーとは

カテーテル、ステント、人工心臓弁などの低侵襲医療機器では、「組織にやさしい柔らかさ」と「長期にわたる信頼性」を両立するエラストマー材料が不可欠です。血管や臓器に追従する柔軟性、挿入・操作時に必要な一定の剛性、そして長期留置中も性能を維持する生体耐久性が同時に求められます。

従来は、柔軟性と生体適合性に優れるシリコーン、高い機械強度と成形性を持つTPU、コストメリットのあるPVCなどが用途ごとに使い分けられてきました。一方、脱炭素・環境配慮の流れの中で、医療分野においてもバイオベース材料の検討が進みつつあり、「サステナビリティ」を材料選定の新たな軸に加える動きも広がっています。シリコーンとTPUの性能ギャップを埋めつつ、バイオベース由来を両立する材料としてChronoFlex™ Sが注目されます。

医療用エラストマーの種類と選定方法

主なエラストマーと特徴

医療機器向けに用いられる主なエラストマーは、次のように整理できます。

• TPU(熱可塑性ポリウレタン):血液適合性、機械強度、体内軟化性に優れ、CVC、人工心臓、血管グラフト、ペースメーカーリードなど長期留置用途で実績があります。

• PVC(塩化ビニル):安価で透明性に優れ、血液透析チューブなどで多用されますが、可塑剤と耐熱性が課題となります。

• TPAなど他TPE(熱可塑性エラストマー):機械強度や剛性は高いものの、高硬度側が中心で柔軟性に限界があります。

• シリコーン:高い生体適合性・耐熱性・ガス透過性を持つ一方、引裂強度や耐摩耗性、多層チューブや複雑形状の成形性では制約があります

シリコーンとTPU、それぞれの課題

長期体内留置用途では、主にシリコーンとカーボネート系TPUが用いられますが、どちらもトレードオフがあります。

シリコーン

• 長所:非常にソフトで生体適合性に優れ、長期インプラント実績も豊富。

• 課題:引裂強度・耐摩耗性が相対的に低く、押出や多層チューブ成形、他素材との熱融着が難しい。

カーボネート系TPU

• 長所:高い機械強度と生体耐久性、長期インプラント適合。

• 課題:ポリマー骨格が本質的に剛直で硬く、「70A未満」の低硬度領域を設計することが難しい。

さらに、環境・規制の観点からは、化石資源由来のみに依存した材料への懸念が高まりつつあり、「サステナブルな医療用エラストマー」をどう選ぶかも新たな課題になっています。

また樹脂の可塑化に使用される、可塑化効果のあるオイル等は長期体内留置での溶出のリスクがあり、安全性、長期性能安定の側面からも、避けられる傾向にあります。

シリコーンとTPUのギャップを埋める新たな選択肢:ChronoFlex™ S

低硬度な医療TPU

ChronoFlex™ Sは、長期インプラント用途で好まれる ポリカーボネート系骨格を持ちながら、可塑剤を使用せずにTPU単体でショアA60台の柔軟な硬度を実現した新しい医療用TPUです。

医療グレードTPUサプライヤーとしての長年の実績と配合技術により、ハード・ソフトドメインの結晶化を制御することで、硬度の継時的な上昇などの不安定化を抑制し、これにより、従来のTPUに勝る柔軟性と、TPUならではの高い機械強度・耐摩耗性を同時に実現しています。

医療用エラストマーとサステナビリティ

ChronoFlex™ Sの特徴として、36%のバイオベース含有率(ASTM D6866)が挙げられます。これは、原料の一部をバイオマス由来に置き換えたTPUであり、従来の純化石資源由来TPUに比べて、カーボンフットプリントの低減に寄与しうる材料設計であることを意味します。

医療機器分野では、まず安全性・性能・規制適合が最優先ですが、近年では「ライフサイクル全体での環境負荷」や「ESGの観点からの材料選定」を意識する機器メーカーも増えています。ChronoFlex™ Sは、長期インプラントに求められる性能や安全性を維持しながら、バイオベース由来を取り入れることで、サステナビリティを材料選定の一つの評価軸としたい企業にとって、検討しやすい選択肢となります。

材料種別比較

ChronoFlex™ S、を他の材料との比較の視点で整理すると次のようになります。

-「柔軟性」と「長期インプラント適合性」を両立しつつ、押出・射出・コーティングなどの加工性も求める用途で、シリコーンとTPUの中間特性が必要な場合に適した選択肢となる。

-可塑剤を含むコンパウンドTPEとは異なり、純TPU・可塑剤フリーであるため、可塑剤ブリードによる硬度変化リスクを抑制したい用途に適する。

-溶液成形にも対応しており、薄層化や多層化(他材料との積層)など、複合構造の実現に貢献する。

-バイオマス原料の使用により、材料選定時に環境配慮を評価軸に加えたい企業にとって、性能とサステナビリティを両立しやすい候補となる。

ChronoFlex™ Sの特徴

柔軟性と長期インプラント適合性

ChronoFlex™ Sは60Aという低硬度に加え、低弾性率と高伸びを備え、血管や組織に追従しやすいソフトな感触を提供します。体内軟化性を有することで、挿入時は操作性を確保し、留置後にはより柔らかくなり、使用時の柔軟性調整が可能な設計検討に寄与します。

また、医療用TPUとして長期インプラント用途を意識した処方設計が行われており、酸化・加水分解に対する耐性も考慮されています。これにより、長期留置中の物性変化を抑え、性能を安定的に維持することが期待されます。

耐久性と耐摩耗性

低硬度エラストマーで課題になりがちな引裂強度や耐摩耗性についても、ChronoFlex™ Sは高い引張強度・引裂強度を確保しています。同程度の硬度(60A)をもつシリコーンやTPEよりも良好な耐摩耗性を維持していることが示されており、カテーテルの屈曲や挿抜など、繰り返し変形を想定した条件下で、引裂強度・耐摩耗性に関する良好な試験結果が得られています。

成形加工性と他材料への接着性

ChronoFlex™ Sは、一般的TPUと同様に、押出・射出・圧縮成形、溶液キャスト・ディップキャスト、ディップコーティング・スプレーコーティング、エレクトロスピニングなど幅広い加工方法に対応します。ペレットと溶液(THF・DMACまたはその混合溶剤)両方の形態が利用できるため、チューブ、バルーン、コーティング、ファイバーなど多様な形態に展開可能です。

さらに、ChronoFlex™ S 60Aはポリアミド系エラストマーに対して熱融着で高い接着力を示し、多層カテーテル構造において「接着層を追加せず直接融着できる」点が大きな強みです。これは、工程の簡略化、外径の抑制、接着剤に起因するリスク低減に貢献します。

規制・品質・サステナビリティの観点

医療機器向けエラストマーを選ぶ際には、物性に加えて規格適合と品質管理、そして近年ではサステナビリティも重要な評価項目です。

ChronoFlex™ Sは、次のような医療向け要件を満たすよう設計されています。

• USP Class VI 適合

• ISO 10993-5(細胞毒性)適合

• 可塑剤フリー(可塑剤ブリードによる硬度変化や潜在的毒性リスクの低減)

• USDAバイオ認証取得

各種生体安全性評価への適合を前提としながら、バイオマス由来原料を活用した「環境配慮型医療エラストマー」を検討を実施したい企業にとって、具体的な選択肢となります。

適用用途

心血管・神経血管カテーテル

心血管・神経血管カテーテルは、多層構造や複合材で構成され、先端部や外層には高い柔軟性が求められる一方で、全体としてはトルク伝達やプッシュ性も必要です。

課題

• 血管壁へのダメージを抑えるソフトなチップ・外層が必要。

• 多層構造の層間接着に接着剤やプライマーが必要で、外径増加や工程増加につながる。

• キンクや屈曲による破損・性能低下を避けたい。

ChronoFlex™ Sの活用イメージ

• 外層やチップにChronoFlex™ Sを用いることで、60Aのソフトさと体内軟化により低侵襲設計を検討する際の素材選択肢として活用できます。

• シャフトや中間層にChronoFlex™ ALやポリアミド系エラストマーを用い、ChronoFlex™ Sとは熱融着で直接接合することで、接着層や接着剤を削減する。

• 高い機械強度とキンク抵抗性により、細径・薄肉化と安全性の両立を図る。

バルーンカテーテル

バルーンカテーテルでは、バルーンのコンプライアンス、シャフトとの接合、薬剤コーティングのための表面処理など、材料とプロセス両面での課題があります。

課題

• 高いコンプライアンスと十分な強度を同時に満たしたい。

• シャフトとの接合に接着剤やプライマーが必要で、工程が複雑になる。

• ドラッグコーティングのための前処理プロセスが負担になっている。

ChronoFlex™ Sの活用イメージ

• バルーン材料として採用することで、材料の伸度と弾性特性により、コンプライアンス調整を目的としたバルーン設計に応用可能です。

• シャフト側のTPUやポリアミドエラストマーと熱融着で直接接合できるため、接着剤や表面処理を削減し、外径増加や工程負荷を低減できる。

• 溶液形態を活用し、ドラッグコーティング層の設計や表面改質プロセスとも組み合わせやすい。

その他の用途

• ステントコーティング:柔軟性・耐摩耗性・化学耐性を活かした表面層。

• 人工心臓弁など長期インプラント部材:高い生体耐久性と機械強度を活かした弾性部材。

まとめ

医療機器向けエラストマーの材料選定を整理すると、次のような観点が重要になります。

• 柔軟性(硬度、弾性率、体内軟化性)

• 耐久性(引張、引裂、耐摩耗性、長期体内留置適合性)

• 成形加工性(押出、射出、コーティング、多層化の容易さ)

• 他材料との接着性(接着剤の要否、熱融着性)

• 規格・品質(USP/ISO適合、可塑剤有無、原材料管理)

• サステナビリティ(バイオベース含有率、環境負荷)

シリコーンでは強度・加工性が不足し、従来のTPUでは柔らかさが足りない──そんな時に、性能と加工性、さらにサステナビリティを両立する選択肢として、ChronoFlex™ Sをエラストマー材料選定の候補に加えてみてはいかがでしょうか。

医療機器向けエラストマーの詳細な物性比較や、カテーテル・バルーン設計での使い分けをご検討の際は、ぜひChronoFlex™ Sの技術資料をご参照ください。

以下は、技術的なご相談内容の例です。

・医療用途を前提にTPU材料を検討されている方

・既存の医療用TPUやシリコーンに課題を感じている方

・材料選定の方向性を技術的に整理したい段階の方

背景や検討状況を踏まえた技術的なご質問やグレード選定についても、お気軽にお問い合わせいただけます。

<注意事項>

本記事に掲載された情報は、公開時点で入手可能な情報源に基づき作成されておりますが、その正確性、完全性、最新性について、当社は一切の保証を行いません。使用用途に対する品質適性・安全性・適法性については、貴社にてご評価・ご判断をお願いします。

記載された材料特性、滅菌対応、加工性等の情報は、すべてのグレードや使用条件において同等の性能を保証するものではありません。適性については、貴社製品にてご評価・ご判断をお願いいたします。

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