
樹脂表面はなぜ「濡れにくい」のか?
Zelas™親水グレードは、射出成形や押出成形といった一般的な樹脂加工によって、成形品表面に親水性を発現させるよう設計された親水性樹脂です。従来、樹脂表面の濡れ性を高めるためには、プラズマ処理、親水性コーティング、乾燥、検査などの後工程が必要になる場合があります。Zelas™親水グレードは、成形後の表面処理工程を削減できる可能性があり、毛細管、マイクロ流路、液体ハンドリング部材、IVD・医療機器部材などでの工程合理化に貢献します。
樹脂表面はなぜ「濡れにくい」のか
樹脂表面の“濡れ性”は、血液検査機器やマイクロ流路デバイスの測定精度や作業性を左右する重要な要素です。一般的な樹脂は、水や血液のような水系液体をはじきやすい疎水性を示すため、そのままでは液だまりや気泡、流れの不安定さといった問題がられます。
そのため、液体試料を正確かつ再現性良く吸い上げるためのデバイスでは、表面を親水化する後処理が欠かせません。従来は親水性コーティングや大気圧プラズマ、コロナ処理などの表面後処理により、表面を「濡れやすくする」手法が広く行われてきました。

しかし、親水性表面を得るための後加工には、常にコストと工数のトレードオフがつきまといます。専用のコーティング装置やプラズマ処理装置の導入には初期投資が必要であり、薬液や処理条件の管理、前処理・塗工・乾燥・検査といった工程が製造ラインに積み重なっていきます。工程が増えるほど生産リードタイムは伸び、担当者の工数も増加し、最終的な製品コストに大きく影響します。
また、成膜ムラや処理ムラ、経時変化による性能変動といった点は、従来プロセス・新材料いずれにおいても慎重な設計と評価が求められる共通のテーマであり、開発・量産の現場にとって常に気になる懸念ポイントとなっています。
成形のみで表面親水化、後処理工程を削減
こうした背景から、三菱ケミカルが開発を進めているのが、成形だけで表面親水性を発現できる Zelas™親水グレードです。
Zelas™親水グレードは、
親水化に伴う各種処理なしで押出成形や射出成形といった
一般的な樹脂加工プロセスだけで、表面に親水性が現れるよう設計された材料です。

対象部材 | 従来プロセス | Zelas™親水グレードを用いる場合 | 期待される効果 |
|---|---|---|---|
毛細管・チューブ | 射出成形または押出成形 → プラズマ処理→コーティング | 射出成形または押出成形 | 親水化の後工程削減の可能性 |
マイクロ流路部材 | 成形 → 表面処理→コーティング → 接合 | 親水性材料による成形 → 接合 | 工程集約、設備・スペース・管理負荷の低減可能性 |
液体ハンドリング部材 | 成形 → 親水化処理 → 乾燥・検査 | 親水性材料による成形 | 工程短縮および品質管理項目の最適化可能性 |
従来は、成形した後に表面処理ラインへ流し、コーティング・乾燥・検査といったステップを踏む必要がありましたが、Zelas™親水グレードでは成形工程の中で親水性が付与されるため、前処理工程や親水性コーティングの塗布、乾燥工程を削減できる可能性があります。
液体との相互作用や長期安定性などは個別の用途・条件に応じた評価が必要ですが、「親水性のための専用工程」を前提としなくてよいという発想は、設備・人員・スペースの観点からも魅力的な選択肢になり得ます。
開発材:Zelas™CP親水グレード
特徴と機能
✓高い透明性を有し、後加工なしで親水性表面が得られます。
✓内容物の種類によっては添加剤が溶出する場合があるため、単回使用を推奨します。
✓配合設計で硬度や物性調整が可能です。現在、非晶性オレフィンタイプ(Zelas™CP)での開発材の提供が可能です。
✓ Zelas™CPはγ線照射後も溶出物が少なく、日本薬局方試験7.02(溶出試験)をクリアすることを確認しています。
✓ TPS、TPOタイプについては目下開発中です。また一般、工業用途へも展開可能です。
🎦キャピラリーチューブ内を液体がスムーズに充填していく様子を撮影した動画
👉 血液検査用キャピラリーを想定し、液が入口から先端へとスーッと立ち上がるように進んでいく挙動を確認できます。
🎦マイクロ流路チップ内を液体が自発的に流れていく様子を示した動画
👉 幅・深さが非常に小さい流路でも、親水性によって液が安定して前進していくイメージをつかんでいただけます。
備考:これらの動画は旧グレードのものですが、ご紹介する下記のグレードでも同様の効果が得られます。
グレード
Evaluation Items | Test Conditions | Unit | Zelas™CP XHP303 | Zelas™CP XHP304 |
|---|---|---|---|---|
MFR (230°C, 21.2 N) | ISO 1133-1 (for reference) | g/10 min | 8 | 8 |
Density | ISO 1183 reference | g/cm³ | 0.94 | 0.94 |
Flexural modulus | ISO 178 (for reference) | MPa | 1500 | 1500 |
HAZE (2 mm) | Reference: ISO 14782 | % | 2 | 2 |
Total light transmittance (2 mmt) | ISO 14782 reference | % | 92 | 92 |
Melting peak temperature | MCC method | °C | 114 | 114 |
Contact angle* (distilled water) | MCC method | ° | 50 | 15 |
Examples of Sterilization Methods | — | — | Gamma-ray Sterilization / EOG | Gamma-ray Sterilization / EOG |
- *The contact angle was measured 7 days after molding using a 2 mm thick injection-molded sheet.
- The above figures are representative values and are not guaranteed.
- Please evaluate and determine the suitability, safety, and legality of this product for your intended application.
・異なる親水性(接触角度50度、15度)を示す2種のグレードを準備しています。
・医療・分析デバイスで重要となる滅菌プロセスへの対応については、CPタイプはEOG 滅菌に加え、γ線滅菌にも対応可能です。
・TPSやTPOでも開発中のものでご紹介可能ですので詳しくはお問い合わせください。
単回使用推奨と評価で押さえるべき点
Zelas™親水グレードは現在「開発材」という位置づけであり、いくつかの注意点があります。
*内容物の種類によっては、配合された添加剤が溶出する場合があるため、現時点では単回使用を推奨しています。
*血液や試薬など、実際の内容物との相互作用は用途ごとに異なるため、溶出性・機能安定性・安全性については、お客様の想定条件に応じた個別評価が不可欠です。
*規制・認証の観点からも、デバイス全体としてどのような試験が必要になるかを早期に検討し、材料評価と並行して進めていくことをおすすめします。
共創パートナーとしての Zelas™親水グレード
Zelas™親水グレードは、血液検査用キャピラリーやマイクロ流路チップ、親水性チューブといったデバイスに対し、「親水化処理なしで親水性を実現」「液体制御性の向上」「後加工工程の削減によるコスト・工数低減」という 3 つの価値を提供しうる材料です。
一方で、性能の最適化や長期安定性、規制対応などは、個々のデバイス仕様に合わせた検討が欠かせません。
今回ご紹介した 2つのCPタイプ グレードの物性表や動画の評価事例を出発点として、キャピラリーやマイクロ流路の設計条件、滅菌条件、実液での評価計画などについて、ぜひ具体的な課題をお聞かせください。
開発材だからこそ、配合設計や評価プロトコルも含めた共創が可能ですので、詳細情報やサンプルのご相談はお気軽にお問い合わせください。



