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γ線滅菌対応樹脂の選定ガイド~柔軟エラストマーから硬質透明エンプラまで~

γ線滅菌は、材料選定を誤ると物性低下や黄変、溶出物増加などの課題を生む可能性があります。本記事では、柔軟なエラストマー材料から硬質な透明エンジニアリングプラスチックまで、γ線滅菌に対応した当社樹脂ラインアップを使い方と共にご紹介します。

γ線滅菌の普及

医療機器・医薬品容器の滅菌では、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、過酸化水素滅菌、放射線滅菌など、さまざまな手法が採用されています。EOG滅菌が2030年前後を目標にEOG排出を現行比50〜90%削減するレベルで規制強化が進んでいる背景を受け、最終包装状態のまま製品全体を均一に滅菌できるγ線滅菌は、電子線滅菌との合算で世界市場の40~60%を占めるまでに成長しています。1)ディスポーザブル製品での需要が高いものの、対象製品は医療機器・医薬品容器にとどまらず、再生医療・バイオ医薬関連製品や検査診断器材など、用途の幅は広がっています 。

<γ線滅菌のメリット>

・後処理が不要:EOG滅菌のようなガス残留物の除去工程が不要

・特殊包装が不要:ガスを通す特殊な包材を使わずに滅菌可能

・熱に弱い製品にも対応:オートクレーブ滅菌では変形・劣化する製品にも適用できる

γ線滅菌による樹脂劣化の課題

γ線滅菌は優れた滅菌手法である一方、使用する樹脂材料によっては照射による物性低下や外観変化が生じるという課題があります。γ線滅菌への材料対応において最も重要な検討事項の一つです。

酸化・分解による劣化

γ線照射によって樹脂中にラジカルが発生し、酸化反応が促進されます。これにより分子鎖の切断(分解)または架橋反応が起こり、強度低下・脆化・べたつきなどの物性変化が生じます 。

黄変(着色)

ポリ塩化ビニル(PVC)やポリオレフィン(PPやPE)、ポリカーボネート樹脂(PC)などは、γ線照射後に黄変が起きやすいことが知られています。

溶出物の増加

照射によって生成した低分子物質が溶出物として増加すると、医薬品容器や輸液セット等の接液用途において薬液への汚染リスクが高まります。

γ線滅菌対応樹脂のご紹介

これらの課題に対応するためには、γ線照射後も物性・外観を維持できること、接液用途においては溶出の少ない専用の材料を選定することが不可欠です。三菱ケミカルでは、柔軟なエラストマーから硬質なエンジニアリングプラスチックに至るまで、幅広い用途のγ線滅菌対応樹脂ラインアップを取り揃えています。

Zelas™ TPS γ線滅菌対応シリーズ(熱可塑性エラストマー)

Zelas™ TPS は、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)をベースとした医療・医薬用コンパウンドで、ゴム弾性と密封性に優れています 。一般的にTPS材料はγ線照射により黄変や溶出物が増大しますが、三菱ケミカルが新たに開発したZelas™TPSのγ線滅菌対応シリーズでは、γ線照射後も黄変しにくい処方設計となっており、物性性能を維持します。特に、チューブグレードのMP6301C-2は、次世代チューブグレードとして特に欧米で規制が厳しくなっているポリ塩化ビニル(PVC)製チューブ代替に好適です。

主な用途例

  •  IVセットチューブ(MP6301C-2):従来のPVC製チューブからの代替として、可塑剤フリーの安全な輸液ラインを実現
  • シリンジガスケット、バイアルゴム栓、輸液ゴム栓(PJ4302C-1,PJ4302G-1, PJ8302C-1):シリンジのガスケットや凍結乾燥製品のクロージャー (C:無着色 G:グレーカラー)
  • 細胞培養チューブ(MP6301C):再生医療・バイオ医薬分野で求められる高い衛生性と低溶出性を両立

主な用途例

  •  IVセットチューブ(MP6301C-2):従来のPVC製チューブからの代替として、可塑剤フリーの安全な輸液ラインを実現
  • シリンジガスケット、バイアルゴム栓、輸液ゴム栓(PJ4302C-1,PJ4302G-1, PJ8302C-1):シリンジのガスケットや凍結乾燥製品のクロージャー (C:無着色 G:グレーカラー)
  • 細胞培養チューブ(MP6301C):再生医療・バイオ医薬分野で求められる高い衛生性と低溶出性を両立

Zelas™ CP(硬質透明非晶性ポリオレフィン系樹脂)

主な用途例

  • リンジ筒体・バイアル容器:抗体医薬・核酸医薬など低吸着性が求められる薬剤との接触部材

  •  医療用バッグフィルム:γ線滅菌対応の医薬品低吸着包装材として

  •  細胞培養プレート・マイクロ流路デバイス:高透明性と低吸着性を活かした再生医療・研究用途

XANTAR™ 耐放射線グレード(Br系)(透明エンジニアリングプラスチック)

XANTAR™ は、三菱ケミカルが提供する高性能ポリカーボネート(PC)樹脂です 。ポリカーボネートは優れた透明性・耐衝撃性・耐熱性を兼ね備えたエンジニアリングプラスチックとして、医療機器分野で長年の実績を持ちます。蒸気滅菌・EOG滅菌への対応に加え、XANTAR™ 耐放射線グレード(Br系)では、γ線照射による黄変を抑制するための特別な設計が施されており、γ線滅菌・電子線滅菌にも対応しています 。

特長

  • γ線照射後の黄変を大幅に抑制:Br(臭素)系の特殊安定化剤を配合し、照射によって生じる着色を抑制。透明性が要求される医療機器でも外観品質を維持

  • 優れた透明性:ガラスに近い高い光線透過率で、内部の液体・組織・デバイスの視認性を確保

  • 高い耐衝撃性:ポリカーボネート本来の強靭性により、薄肉精密成形品にも対応

  • 広い実用温度域:−40℃〜+120℃と幅広い使用環境に対応

  • 複数滅菌方式への適合性:γ線・電子線・EOG滅菌・オートクレーブ滅菌にも対応

  • 長年の医療実績:ダイアライザー(人工腎臓)、人工肺など数々の医療機器に採用実績

γ線滅菌対応の材料をお探しなら

Zelas™TPSとZelas™CPに関してはγ線滅菌照射前後の技術資料をご用意しておりますので、下記からダウンロードください。

三菱ケミカルでは、γ線滅菌対応樹脂に関するサンプル提供・技術相談を承っております。用途に応じて最適なグレードをご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。

<注意点・免責事項>

・製品としてのγ線滅菌への適用性は、お客様にてご確認お願いいたします。

・記載されているデータは、当該試験方法に準じた当社所定の試験法による測定値の代表例です。

・記載の用途例は、当社製品の当該用途への適用結果を保証するものではありません。

・記載の用途や応用にかかわる工業所有権や使用条件などについては貴社にてご検討下さい。

・当社製品の取り扱い(輸送、保管、成形、廃棄など)に当たっては、使用される材料、

グレードの技術資料や安全データシート(SDS)をご参照下さい。特に、食品容器包装、医療部品、

安全器具、小児用玩具等の用途へのご使用の際は、別途ご相談下さい。

・日本国内においては、当社製品の各グレード着色品の場合、適用法令である労働安全衛生法

第57条の2に基づく施行令18条の2中の別表9にある名称等を通知すべき化学物質を含有している

場合があります。詳細は、お問い合わせ下さい。

・当社製品の輸出及び当社製品を組み込んだ製品の輸出に当たりましては、外国為替及び外国貿易法等

の関係法令の遵守をお願い致します。

・各国の化学物質管理制度により、当社製品に使用している化学物質が規制を受け、

別途申請が必要な場合や輸出入ができない場合があります。お客様が当社製品の輸出者又は輸入者

となる場合は該当国での規制適合状況をお問い合わせください。

<参考文献>

1)環境省 酸化エチレンの排出抑制対策について | https://www.env.go.jp/council/content/07air-noise02/000278096.pdf

厚生省 優先評価化学物質のリスク評価(一次)ーエチレンオキシド| https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000533916.pdf

日本貿易振興機構 中国の揮発性有機化合物(VOCs)規制政策 | https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/qa/pdf/04C-110110.pdf

European commission Zero Pollution: Modernised rules on industrial and livestock rearing emissions come into effect | https://environment.ec.europa.eu/news/revised-industrial-emissions-directive-comes-effect-2024-08-02_en#:~:text=The%20revised%20law%20will%20cover%20additional%20sources%20of,administrative%20costs%2C%20and%20tighten%20conditions%20on%20granting%20derogations.

Federal Register :: National Emission Standards for Hazardous Air Pollutants: Ethylene Oxide Emissions Standards for Sterilization Facilities Residual Risk and Technology Review | https://www.federalregister.gov/documents/2024/04/05/2024-05905/national-emission-standards-for-hazardous-air-pollutants-ethylene-oxide-emissions-standards-for

EPA Fact Sheet Final Amendments to Air Toxics Standards for Ethylene Oxide Commercial Sterilization Facilities: Fact Sheet | https://www.epa.gov/system/files/documents/2024-03/factsheet_etosterilizers_final_3-14-24.pdf

GIPA(Global Industry Practices Alliance)A Comparison of Gamma,  E-beam, X-ray and Ethylene Oxide Technologies for the Industrial Sterilization of Medical Devices and Healthcare Products | https://gipalliance.net/wp-content/uploads/2013/01/GIPA-WP-GIPA-iia-Sterilization-Modalities-FINAL-Version-2017-October-308772.pdf

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また、一般的な技術情報および参考情報として提供するものであり、記載内容の正確性・完全性について保証するものではありません。

製品の性能や特性は使用条件・加工条件等により異なる場合があります。最終的な適用可否や設計判断はお客様ご自身の責任にてご判断ください。

三菱ケミカル株式会社

三菱ケミカル株式会社
ポリマーコンパウンズビジネスグループ 日本本部

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