熱可塑性エラストマー(TPE)とは?種類や特徴を分かりやすく解説

熱可塑性エラストマー(TPE)は、ゴムのような弾性とプラスチックの加工性を両立する革新的な素材です。成形加工性やリサイクル性に優れ、医薬品包装や自動車部品、電子機器、生活用品など幅広い分野で採用されています。本記事では、三菱ケミカルが誇る多彩なTPEラインナップもご紹介します。
熱可塑性って? 熱硬化性との違い
熱硬化性樹脂は、一度硬化(架橋)すると再び加熱しても溶けたり柔らかくなったりすることができず、リサイクルが困難です。一方、熱可塑性樹脂は加熱・冷却を繰り返しても化学構造が変化せず、射出成形や押出成形などの加工を何度でも行えます。
• 熱硬化性樹脂:高温で架橋反応を起こし、永久的に硬化。
• 熱可塑性樹脂:加熱で可塑化し、成形後に冷却して固化。再成形可能。
エラストマーってなに?
エラストマーは「Elastic(弾性を有する)+Polymer(高分子)」で、外力を受けても元の形状に復元する性質があります。熱可塑性エラストマー(TPE)は、ハードセグメントとソフトセグメントがブロック共重合または相分離した構造で、ゴムのような弾性とプラスチックの加工性を両立する素材です。以下の利点により加硫ゴムやシリコーンゴムからの代替としてOリングやシール材、グリップ部品、ケーブル被覆など多様な用途で活躍しています。
• ゴムのような柔軟性と伸縮性
• プラスチック成形機による容易な量産
• 加硫(架橋)工程不要による工程削減・低コスト
• リサイクル・再加工が容易
TPEの種類と選び方
ハードセグメントとソフトセグメントの化学構造によって主に6つに大別されます。

こんなにたくさんあると、適切なTPEを選択するのは難しいですね。三菱ケミカルではTPAを除くほぼ全てのTPEをラインナップしており、用途や使用環境に応じて適切な材料を提案できます。TPE材料をお探しの場合は、まず私たちにご相談ください。
三菱ケミカルのTPEラインナップ
三菱ケミカルでは、お客様の求める性能と加工条件に応じて選べる多彩なTPE製品群を取り揃えています。
非架橋オレフィン系エラストマー (TPO)
ポリオレフィンベースのため、耐薬品性や耐候性に優れ、自動車内外装部品や建材のシール材に使用されています。非架橋のため、衛生性にも優れ医療用のフィルムや容器にも好適です。
優れた耐薬品性・耐候性
軽量で優れた耐衝撃性
医療グレードにも対応 (Zalas™TPO)
動的架橋オレフィン系エラストマー (TPV)
オレフィン系樹脂のマトリックスにオレフィン系ゴムを架橋させ、架橋構造を有しながら熱可塑性加工が可能です。高い耐熱性と耐油性を併せ持ち、優れた圧縮永久歪を発揮します。自動車用途(モール、内装表皮、エンジンルーム内部品)や産業資材用途では工具グリップに好適です。
動的架橋による低圧縮永久歪
優れた耐熱性・耐油性
スチレン系エラストマー(TPS)
スチレン系ゴム(SBC)を使用し、高い衛生性と滑らかな表面が特徴です。硬度範囲が広く、柔らかなタッチ感が求められる生活雑貨用途や自動車内装(モール/射出表皮/グリップ)、医療用のガスケットやゴム栓にも好適です。
柔軟性
低圧縮永久歪
医療グレードにも対応 (Zelas™TPS)
ポリエステル系エラストマー (TPC)
ハードセグメントがポリエステル(PBT)、ソフトセグメントがポリエーテルで構成されたポリエステル系のTPEで、高い耐熱性と耐油性、耐摩耗性が特徴です。エンジニアリングプラスチック(ABS/PC/PMMAなど)と組み合わせた二色成形にも優れています。
耐熱性
耐油性
耐摩耗性
二色成形による設計の多様化
ウレタン系エラストマー (TPU)
ポリオールとイソシアネートを化学反応させて得られるポリウレタン結合をハードセグメントに持ち、ソフトセグメントにはポリエーテルやポリエステルポリオールを用いる構造で、生体適合性や機械的強度が特徴です。三菱ケミカルは、米国AdvanSource Biomaterials社のTPU事業を買収し、医療用TPUのポートフォリオを強化しました。これにより心臓カテーテルなど高付加価値医療機器市場向けの製品認証や販売チャネルを獲得し、グローバル展開を加速させています。
- 優れた機械的強度と耐摩耗性
- 優れた生体適合性・抗菌性

お困りごとがあれば
是非三菱ケミカルにご相談ください。豊富な知見と経験を活かし、最適なご提案とサポートをお届けいたします。


