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鋼管被覆に求める役割とModic™の特長

インフラの長寿命化がますます求められる中、鋼管の被覆材選定は防食性能と施工性の両立する鋼管の被覆材選定の重要性が高まっています。本記事では、上水道・下水道・ガス管など地中埋設鋼管において必要とされる被覆材の役割と、Modic™が持つ革新的な特長を紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.鋼管被覆に求める役割
    1. 1.1. 上水道管
    2. 1.2.下水道管
  2. 2.下水道管の更生技術とその種類
    1. 2.1.ガス管
    2. 2.2.その他地中埋設管
  3. 3.適用材料と特徴
    1. 3.1.PA(ポリアミド)
    2. 3.2.PE(ポリエチレン)
    3. 3.3.変性PE (変性ポリエチレン) 「Modic™(モディック)」
  4. 4.Modic™の特長
    1. 4.1.特長1:鋼管との高い密着性と保持力
    2. 4.2.特長2:多様な加工・施工方法への適応性
    3. 4.3.特長3:環境配慮とサステナビリティ
  5. 5.まとめ

鋼管被覆に求める役割

地中や水中で長期にわたり使用される鋼管には、腐食や電食を防止し、耐用年数を延ばすための被覆技術が不可欠です。近年では、老朽化管路の更新・更生技術の重要性も高まっており、被覆材の性能は社会インフラの信頼性を左右する要素となっています。

上水道管

上水道管には、安全性と衛生性が最も求められます。内面は水質への影響が少ない材料、外面は防食性に優れた材料による被覆が必要です。内面防食では、清浄な水質を維持するためにポリエチレン(PE)や変性PE(変性ポリエチレン)などの熱可塑性樹脂が多く用いられます。これらは水との親和性が低く、化学的に安定しているため、水質汚染を防ぎながら長期にわたって滑らかな管内面を保持します。外面防食では、現在ではPE被覆が主流です。柔軟性が高く、耐水性・耐薬品性に優れ、施工性にも優れています。  

 一方で、ポリアミド(PA)被覆も採用実績があります。PAは高強度・高耐摩耗性を持つことから、外的衝撃や擦れに強い材料として注目されましたが、吸水による加水分解の懸念があるため、長期使用環境では評価が分かれます。用途や設置条件によっては、現在でもPA被覆が適したケースもあり、目的に応じた選択が重要です。

下水道管

下水道管は、硫化水素などの腐食性ガスや酸性環境にさらされるため、特に内面防食が重要です。内面にはFRP(繊維強化プラスチック)や硬化性樹脂(エポキシ、ビニルエステル樹脂など)が一般的に使用され、耐酸・耐薬品性を確保します。一方、外面防食には土壌腐食対策としてPEや変性PEなどの熱可塑性被覆が用いられ、長期的な防食性能を維持します。

下水道管の更生技術とその種類

近年、老朽化による下水道管の破損・陥没事故が全国的に増加しており、掘り返さずに既設管を修復する「管更生技術」の導入が進んでいます。更生管は、既設管内に新しいパイプや樹脂層を形成することで機能を再生するもので、施工環境や目的に応じて様々な工法が選定されます。

代表的な更生管の種類:

・反転ライニング工法:樹脂含浸ライナーを反転挿入し、熱硬化性樹脂で硬化。

材料=不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂など。

・スリップライニング工法:既設管内に新しい塩ビ管やPE管を挿入し、間隙を充填して更生。

材料=PE・PVC・PPなど。

・スプレーライニング工法:既設管内にエポキシ樹脂やポリウレア樹脂を吹き付けて防食層を形成。

ガス管

ガス管は、内部圧力と電食環境の両方に耐える必要があります。外面防食には、絶縁性・耐衝撃性に優れたPEやポリ塩化ビニル(PVC)が主流です。特に近年は、耐久性と施工性に優れた3層PE被覆鋼管が標準仕様となっています。PAは強靭で耐摩耗性に優れた材料として知られていますが、吸湿による加水分解の懸念があり、使用環境に応じた慎重な選定が求められます。限定的ではあるものの、特定条件下ではPAの特性を活かした応用も検討されています。

その他地中埋設管

電力ケーブル保護管、通信管、農業用水管などでは、長期の防食性・耐候性・耐衝撃性が求められます。使用環境に応じて、PEや変性PE、またはFRPなどが採用され、ライフサイクルコスト低減に寄与します。

適用材料と特徴

鋼管被覆に用いられる材料は、使用環境・設計寿命・施工方法により多様です。中でもPE系材料は軽量・柔軟で耐薬品性に優れ、広く採用されています。ここでは代表的な材料とともに、当社が開発した変性PE「Modic™」の特長を紹介します。

PA(ポリアミド)

PAは、高い機械的強度・耐摩耗性・耐熱性を備えたエンジニアリングプラスチックです。地中環境や外的衝撃に対して優れた抵抗性を示す一方、吸水による加水分解の懸念があり、長期的な寸法安定性の確保が課題とされています。そのため、用途は限定的ですが、高強度や耐擦傷性が求められる特殊環境下では依然として有効な選択肢となり得ます。

PE(ポリエチレン)

PEは、軽量・柔軟・優れた防食性と電気絶縁性を兼ね備えた材料として、上水道管・ガス管・電力保護管など幅広く採用されています。特に3層構造(エポキシ下地+接着層+PE外層)をもつ3層PE被覆鋼管(3PE管)は、現在の地中埋設防食仕様の標準となっています。しかし、通常のPEは金属面への密着性が低く、被覆層の剥離が課題となる場合があり、接着層の確実な形成や前処理条件が重要です。

変性PE (変性ポリエチレン) 「Modic™(モディック)」

当社が開発した「Modic™」は、通常のPEをベースに特殊変性処理を施すことで、鋼管表面との密着性・保持力を飛躍的に向上させた新世代の被覆材料です。PE本来の耐薬品性・柔軟性を保持しながら、長期防食性と加工性を両立しています。

Modic™の特長

特長1:鋼管との高い密着性と保持力

Modic™は、鋼材表面の酸化被膜や下地処理層との化学的結合力を強化することで、通常PEの弱点である界面剥離の発生を大幅に低減します。高湿環境下でも優れた耐水密着性を発揮し、衝撃・曲げ応力に対して被膜の追従性が高く、割れ・浮きが発生しにくい構造です。これにより、過酷な地中環境下でもメンテナンス頻度低減・ライフサイクルコスト低減が可能になります。

特長2:多様な加工・施工方法への適応性

Modic™は、外面被覆用押出成形グレード、内面ライニング向け粉体塗装・流動浸漬用粉体グレードなど、用途に合わせた最適な製品を提案可能です。

特長3:環境配慮とサステナビリティ

Modic™は鉛フリー・ハロゲンフリー設計を採用しており、施工時の安全性や廃棄時の環境負荷を低減します。押出や粉体塗装時のリサイクル粉回収・再利用が容易で、CO₂排出削減・資源循環の観点からもサステナブルな防食材料として評価されています。

まとめ

Modic™は、鋼管との高い密着性・高い保持力、長期的な防食耐久性、多様な施工方法への対応力等、優れた機能性と環境性能を兼ね備えた変性PE材料です。上水道管・ガス管・電力・通信・農水インフラなど、幅広い地中管路の外面・内面防食用途に適用可能であり、社会課題であるインフラ長寿命化と維持管理コスト削減に貢献します。

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