
触り心地が変わらない製品を!Tefabloc™ QEシリーズで実現する長期信頼性
エラストマーは触感と加工性に優れ、多様な製品で採用されますが、長期使用には摩耗・傷・付着物質への耐久性が必要です。本記事では、長期間の触り心地と外観を維持する高耐久性を実現するTefabloc™ QEシリーズについて解説します。
目次[非表示]
- 1.エラストマーに求められる耐久性
- 2.Tefabloc™TPS QEシリーズの耐久性
- 2.1.耐摩耗性
- 2.2.耐傷つき性
- 2.3.付着物質による浸透と変質
- 3.Tefabloc™TPS QEシリーズについて
- 3.1.高耐久性の証=自動車業界での実績
- 3.2.用途例
- 3.3.グレードラインナップ
エラストマーに求められる耐久性
熱可塑性エラストマー は、ゴムのような弾性とプラスチックの加工性を両立する革新的な素材です。成形加工性やリサイクル性に優れ、医薬品包装や自動車部品、電子機器、生活用品など幅広い分野で採用されています。
エラストマー材料が活躍する場所の1つは、人の手に直接触れる用途や、環境に常にさらされる表層材としての役割です。自動車の内装部品、工具のハンドル、スマートフォンケース、スポーツ用品のグリップなど、これらの用途では、単に「柔らかい」「握りやすい」というだけでは不十分です。長期にわたって品質を保ち続ける耐久性が求められています。なぜなら、これらの部材は常に環境による「接触と変化」にさらされているからです。
毎日、何百回、何千回と繰り返される手の接触。また、単なる物理的な力だけでなく、汗に含まれる塩分、皮脂、制汗剤、日焼け止め、ハンドクリームといったさまざまな付着成分の影響が伴います。また衣服などの摩擦は、表面を少しずつ傷付け、ざらつきや光沢の消失を生み出し、製品外観が「古びた(=劣化した)感じ」となって現れます。
製品の中身自体に問題が起こっていなくても、製品外観が損なわれてしまうと、消費者の使用感に対してネガティブに働き、製品や、ひいてはメーカーのブランドイメージを棄損することにもつながります。
長期間の間、製品を使い続けていただくためには、表面材として使用するエラストマー材料には「耐摩耗性」で日々の接触に耐え、「耐傷つき性」で傷から表面を守り、さらには「時間経過」「熱」「光」「化学薬品」等に対する、「耐久性」が求められているのです。
こうした「複合的な耐久性要求 にどう応えるか」それこそが、エラストマー材料選択の最前線にある課題なのです。我々も長年、これらの要求に応えようと開発を継続してきており、従来のTPSを進化させたTefabloc™TPS QEシリーズとして従来の他のエラストマーより、耐摩耗性に優れているグレードとして主に自動車内装での展開を図ってきました。
次に、具体的なデータを交え解説したいと思います。
Tefabloc™TPS QEシリーズの耐久性
耐摩耗性
ヒトの手が繰り返し触れる部位では、微視的には「摩擦」が常に発生しています。自動車のグリップなら年間数万回、工具なら毎日数百回の握り返し。この累積的な摩擦は、材料表面を少しずつ破壊し、やがて「ざらつき」「光沢の消失」となって現れます。
下の表は、表面材料として一般的に使用されるエラストマーに対して表面を摩擦試験にて評価した結果です。

汎用TPSでは表面のシボ加工が削れて平らになり、摩耗が明らかであるのに対し、Tefabloc™ QEシリーズは外観の変化が少ないことがわかります。また、摩耗した重量や、摩擦試験に使用した試験に使用した綿布 への色移りも少ない結果となりました(詳細データについては「技術資料」からダウンロード可能です)。
これは衣服などのこすれによって、製品外観の劣化、また相手材(衣服)などへの色移りを模した試験となっており、摩擦による衣服等への色移りの可能性を評価する試験になっています。
耐傷つき性
日常の使用環境では、摩擦だけでなく、鋭利な物体との接触による「引っ掻き傷」も避けられません。鍵、爪、硬質なプラスチック部品など、意図しない接触が繰り返されることで、表面に傷がつき、それが積み重なると「古びた感じ」や「品質の低下」として視覚的に認識されてしまいます。特に自動車内装や消費者向け製品では、この耐傷つき性が製品寿命やブランドイメージに直結します。
タングステン刃をサンプル表面に一定加重で押し当てて、表面にできる傷外観を評価しました。

写真を見てわかるように、汎用TPSでは表面の損傷が目立ちやすく白っぽい傷が入っているのに対し、Tefabloc™ QEシリーズは傷が深くならず、見た目の劣化が最小限に抑えられています。これは、表面硬度と内部の弾性のバランスを精密に設計した結果なのです。
付着物質による浸透と変質
手が触れるということは、付着物質の接触も意味します。汗の塩分、日焼け止めに含まれる油成分、また製品同士の接触、樹脂製品に含まれる可塑剤やオイルの移行により、接触したエラストマーが変質し膨張や色味の変化が起きることがあります。その課題に対して、QEシリーズは堅牢な耐性を示します。
それを示す結果の一例として、塩化ビニル製のスマホケースを高温下で接触させた時にエラストマーが膨張して外観不良が生じたケースがあり、その再現実験を行いました。
評価対象のエラストマーと塩化ビニル樹脂の小片を80℃で一定時間、接触させた後のエラストマー側の表面の変化をレーザー顕微鏡で評価した結果になります。

左の汎用TPSのグレードでは中心部が赤く表示されています。これは、塩化ビニル樹脂に接触している部分が、膨らんで、外周部より盛り上がっている(高くなっている)状態です。
一方で右のQEシリーズは体積膨張がほとんど起きていないことがわかります。
市場クレームとなった原因は、柔らかい塩化ビニル樹脂は通常、可塑剤を多く含んでいます。高温環境下では、その可塑剤が滲出し、エラストマー側へ移行することもあります。そういった接触した素材からの付着物質への耐久性もQEシリーズは有しています。
これらの詳しい試験条件や結果に関しては、下記の技術資料をご参照ください。
Tefabloc™TPS QEシリーズについて
高耐久性の証=自動車業界での実績
自動車内装部品への要求は、業界で最も厳しいレベルです。初回登録から10年以上、走行距離10万kmを超える使用期間、夏場想定80-110℃、冬場-35℃までの温度変動、また汗・日焼け止め・制汗剤・ハンドジェル・飲料など多種多様な接触する化学物質、そしてクレーム率1%超過で供給契約が失われるという厳格な品質基準、こうした厳しい環境と要求の中で、Tefabloc™ QEシリーズは国内外の自動車メーカーに採用されています。グリップ・コンソール・ドア・ダッシュボード周辺といった高接触部位でも、長期にわたり耐久品質を評価されています。この実績こそが、信頼性の証明となることと思います。ぜひ、自動車業界の厳しい品質をクリアしたQEシリーズを、御社の製品への展開を検討してみてください。
用途例
QEシリーズはPPなどのオレフィン樹脂との二色成型が可能です。
・柔軟性と触感が重視される、日用品、電化製品などのグリップやハンドル類
・操作感と耐久性が求められる、ボタンや表示部など
・触感と美観が求められる意匠部品 、加飾製品
グレードラインナップ
Tefabloc™ QEは「しっとり感」から「さらさら感」まで、幅広い触感バリエーションを硬度A40 から90程度の硬度域で提供が可能です。単に「丈夫」なだけでなく、設計者が求める「質感イメージ」を自由に実現できる可能性があります。また、高流動化、耐熱性アップなど様々な顧客ニーズに合わせて開発を行ってきました。技術情報に詳しいグレード選定については下記の技術資料をご参照ください。


